アスプルンドの建築 北欧近代建築の黎明 ☆☆☆

近代建築の論点の特異性。北欧の図書館を紹介した実務的な本を読んだあとでは、ことさらそれを思う。個別的要素(気候、地理、社会構成員等)の一切を近代建築は捨てるが、建築の使い手(生身の市民、移民、司書)にとってはそれが全てだ。
建築に奥行が生まれるのは、白人(「西欧の」)、成人、男性というモダニズムの前提条件が崩れるとき。アスプルンドは、フラットな国際様式に一度は近づいたものの終始「北欧の」建築家であった。文字通り1922年の「森の火葬場」計画に始まり、1940年、その実現に終わった。
ともあれストックホルムの図書館はぜひとも若いうちに訪れたい。空間の力強さと象徴性は、いかなる本も伝えつくせぬものである。