2012-01-01から1年間の記事一覧

2012

逆さまゲーム アントニオ・タブッキ ☆☆☆☆

2013年にむけて

2012年、最も感化された本、近日お知らせする予定です。今年は、多くの方から本の情報をお寄せいただき 大変感謝しております。ありがとうございました。 来年もどうぞよろしくお願いいたします。

浜田廣介童話集 (ハルキ文庫) ☆☆☆☆

ほんものの赤い火には あたたかな童話がにあう 星になりたい老いた街灯 子をうしなった母を思う、夢くい獏 酒に酔った男を照らす、やさしい月 ひとつひとつ、繰るのはちいさな物語 ひと夜ひと夜、新しい年へと星を数えて この冬も、霧島、暖炉の火を囲んで

棟梁 技を伝え、人を育てる 小川三夫 ☆☆☆

西岡常一棟梁に学び、鵤工舎で「ひと」と「もの」をつくってきた小川三夫棟梁。組織論、ものづくり論であり、伝統と創出へ手向けた言葉でもある。あらゆる世代と立場の読者を奮い立たせる語り。 時間について 「長い仕事は人を作るよ。/時間の重さに負けな…

時が滲む朝 楊逸 ☆☆☆☆

歴史に残らなかった人々の血の通った物語は、生き生きとして、同時にもどかしくて哀しく、それでもやはり逞しい。読みたかったものを読んだという快感を得た。わたしたち日本の若者にとって、活字で読んでも判らない「天安門」、中国が、苦悩しつつ成長する…

コラージュ アナイス・ニン ☆☆☆

不連続だが果て無く続く夢。まさにコラージュ。寄せては返す、波のレースをつなぎとめて。 ただ、夢だけには終わらない。本作品のとらえにくさの在り処ではないか。幕間に実在の人物が登場し、実際に交わされたであろう言葉が刻まれる。(たとえばライトのも…

師走、そわそわ

121212という並びに、なんだか師走のそわそわ感をみてしまう。ここ1,2日は本が進まない。仕事がそわそわ、クリスマス会の準備でそわそわ…パーティグッズや食材がぞくぞく揃い、支度したくてうずうずしています。

師走、本棚も大掃除

11月にフォローできていなかった本、12月に入り余裕があって読めた本、連日アップしました!一見すると連関のないタイトルが並んでいますが、不思議と頭の中では結びつくもの。 そして毎日ぞくぞく本が家に届きます、誇張でなく本当に毎日…明らかに「冬ごも…

都市の感触 [1987] 日野啓三 ☆☆☆☆☆

氷解。 あのころ―村上春樹の嘘くさいにおい、伊東豊雄の軽さと透明感。「地下のしみ」はその全てであった。実に、自分自身の感触として、ようやくわたしは80年代を諒解した。現実。 書きたかったものを読んだという鳥肌。ドッペルゲンガーは実在する。あの影…

あの日からの建築 伊東豊雄 ☆☆

「批判をしないこと」 つまりは行動せよということ。重い言葉だ。 東京を解剖する眼差しを、建築という実体のある言語で表現してきた「野武士」世代。(表現、それは建築家の傲慢だ。)彼らは今、会社社会でいうところの定年を迎えている。 東京をはなれ、批…

本が崩れる 草森紳一 ☆☆☆

偶然手にした随筆で、物書きの正体を知らない。清潔感に欠く文章だ。言葉は立居振舞いの一部。著者の写真を見て納得した。けれども不思議と嫌いにはなれない。本が崩れるだけの日常劇のはずが、李賀の詩を呼び、秋田の旅路にいたる。崩れる本を見事払いのけ…

本に読まれて 須賀敦子 ☆☆☆☆☆

乳白がかったピンク色に、少し、藤色の斑がはいっている。慈愛と内省に満ちた石。そんな美しさを湛える須賀敦子のことばに、静かで深い感動を覚えずにはいられない。表層を流れることをせず、深く石に沁みいる水。嫋やかで気高い女性になりたい。

Tomorrow―建築の冒険 山下保博×アトリエ・天工人 ☆☆

冒険のはじまりは、いつも唐突だ。ガリバーは小人の島に漂着し、アリスが穴をくぐった先では時空間が歪んでいた。突拍子もない物語だが、その根底には常に鋭い社会風刺がある。一見すると大胆で奔放な作風の山下氏もまた、終始、建築へ問いを真っ向から投げ…

ホワット・ア・うーまんめいど ある映像作家の自伝 出光真子 ☆☆☆

二児の母、アーティストの妻、そして「男尊女卑が背広を着たような」かの出光佐三の末娘として。女であることを感じ、考えぬき、映像に託してきた出光真子。日米を行き来し、女の表現者として自己を確立した70年代を中心に描く。当時のフェミニズムの高まり…

ウェィティング・リスト 12月

冬ごもりにむけて ワインを何本も買いました。本も毎日届いて、クリスマスのよう。暖炉でぬくぬく、温泉でぽかぽか、朝からワインと読書。年末恒例、霧島ごもりが待ち遠しい。物語作家の技法(フェルナンド・サバテール) インド夜想曲(アントニオ・タブッ…

GANTZ SUPER!

wow!とほんとに口に出してびっくり嬉しかったのは今年はじめてか。うん、ぜったいそうだ。嬉しくて書き留めました。まさか、ダメモトで出したメール、ドイツから返信が来るとは。Afterwards 12月1日 仙台へ。吹雪く福島を北上、宮城に入りパッと晴れ渡る空…

図書及び図書館史 ☆☆☆

堅苦しいタイトル。それもそのはず、司書課程の教科書だそうです。西洋・中国・日本、古代から現代まで、図書館史を幅広くカバーしています。 とくに中国史は圧巻。中国の古代からの強硬体質、中央集権制に目を見張りました。システムは高度に組織化され、事…

17歳のための 世界と日本の見方 松岡正剛 春秋社 ☆☆☆

物語と言葉がうまれ、宗教、文化が生成されるさまを俯瞰しています。現代の世界と日本をみる直接のヒントではありませんが、そのベースを大変わかりやすく案内している本です。

美しき日本の残像 アレックス・カー 朝日文庫 ☆☆☆☆

この国を「醜悪」というのは簡単だ。私は、アメリカ人の著者に「一端を担ったのはあなたの国でしょう」と返したくなる。ただ、日本にくらし、古典芸能に造詣の深い著者に対し、私は何ら自信を持ちえない。日本人であることすら、少しの保証にもならない。手…

あらためて教養とは 村上陽一郎 新潮文庫 ☆☆☆

祖父は英文学の学者だった。大学在籍中は戦時下で、英文学科に前後して哲学科も出たはずだから、私と同じ歳のころ、28ではまだ駆け出しの教師だったと思う。 声楽家顔負けの美声を、しっかりとした骨に響かせる。聞きなれたアメリカ英語とは異質のイギリス…

覚えていない 佐野洋子 ☆☆

佐野洋子らしい爽快感がない、全くない。すがすがしさと、不快感は紙一重。

プリンシプルのない日本 白洲次郎 新潮社 ☆☆☆

いっとき白洲次郎・正子が流行った。なるほどな、と思う。日本は今も「戦後」だ。 私がぼやぼやしているうち、何故か政界は「阿部さんお帰りなさい」モードで、野田さんはといえば、相変わらずむくんだ顔してる。政治と金に私は疎い。

ある新書

働き方や女性の生き方を「説く」本はやたら多い。たまに読んでます、ゴシック体だけ拾い読めば賞味10分くらい。今日は3冊流しました。およそ私でも書けることが書いてあるので、時間は浪費しないよう、この感想文も推敲しないつもり。うち一冊は、超大手…

ロッタちゃん

ちょっとわかってしまいました、私のドイツ語でのお返事JaとかNeとか、スウェーデンのこの五才児?レベル!?スウェーデン語ってこんなドイツ語に近いんだ。びっくり。 「なんでもできちゃうの」ってロッタちゃん、小生意気でかわいいヨ。さりげない色使い、…

シズコさん 佐野洋子 ☆☆☆☆

重かった。佐野洋子節に救われてはいるけれど。 ひとりの女性が、自分の生をいきる女であり、ある女性の母であり、戦中戦後の日本の女そのものでもあった。やっぱり、重いんだと思う。うまく云えない。

「アンソニー・ブラウン展―ゴリラが好きだ―」@いわさきちひろ美術館

イギリスの国際アンデルセン賞受賞画家。常識的大人を自負する私はギクリとする。作家の偏愛するゴリラたちは実に人間くさく、ウィットが辛辣だ。日本の「カワイイ」文化、漫画文化とは違う、アイロニーの文化だろうか。 企画展の副題でもある代表作「ゴリラ…

アスプルンドの建築 北欧近代建築の黎明 ☆☆☆

近代建築の論点の特異性。北欧の図書館を紹介した実務的な本を読んだあとでは、ことさらそれを思う。個別的要素(気候、地理、社会構成員等)の一切を近代建築は捨てるが、建築の使い手(生身の市民、移民、司書)にとってはそれが全てだ。 建築に奥行が生ま…

「古道具、その行き先―坂田和實の40年―」@松涛美術館

艶めかしい白井晟一の異空間に会するは古道具たち。しげしげと鑑賞するもつかの間、「一体どこまで真面目でどこから洒落なのだろう」。BC20C(!)という代物、教会や何かを思わせる異物・遺物の取り合わせ。センスの確かさはわかる。でも「見立て」る人たちの…

TOKYO建築50の謎 鈴木伸子 中公新書 2010 ☆

東京まちなか散歩気分で。 ゼネ勤務の私には「それほんと?」というくだりも多々あり。でもあらためて、東京とはほんとうに強大なダイナミズムがはたらいている空間だと確認しました。完全にのまれています。 余談ですが、先日ドイツ人アーキテクトは少し恥…