JAPAN

「全身○活」時代 大内裕和+竹信三恵子 ☆☆

就活、婚活、保活からみる社会論―バブル以前/以降の「世代間断層」。アベノミクスは、高度経済成長時代を忘れられない世代のための「夢よ、もう一度」にほかならない。まったく同感です。 いち女性ワーカー、いち土建屋として、昨今の潜在的な女性労働力、…

県庁おもてなし課 有川浩 ☆☆

自然に恵まれた(自然しかない)高知を観光地に!県庁「おもてなし課」のラブコメありの奮闘劇。高知を旅行した気分になりました。ざくざくと読み進められるけれど、ライトノベルはやはり苦手。 (角川文庫/読書倶楽部/1408??読了)

にょっ記 穂村弘 ☆☆☆ 

俗すぎて笑いがとまらない。たいのおかしら(さくらももこ)以来かな。鎌倉から新橋までの50分、諦めていつも通り寝よう。笑うアホづら、眠りほうけるマヌケづら。衆目にさらすみっともなさは大差ない。(文春文庫/140802読了/読書倶楽部)

日本史の謎は「地形」で解ける【文明・文化篇】 ☆☆☆ 竹村公太郎

「謎はすべて解けた」と決めの台詞が頼もしい著者は国交省出身の土木マン。家康が読み込み、整備した江戸の地勢、エネルギー(木材)システム、はたまた日本を出てピラミッドまで。土木マンらしい歴史に対する身体感覚はさすがである。なかでも水道史にみる…

私が伝えたい日本現代史1960-2014 田原 総一朗

歴代総理史を通して現代史をみる。たいへんわかりやすい。(2014/ポプラ新書/6月読了)

観月観世 或る世紀末の物語 曽野綾子 ☆☆☆

素性の知れない者たちが満月の夜に集う。何を願うでもなく何を裁くでもなく、ただ現実とも虚ろともわからない話を綴る。作者が見知った世界がひとつひとつの物語になっている。報われない人生の笑顔も、不条理にある一種の陶酔も、事実であろうとなかろうと…

買えない味 平松洋子 ☆

内田百輭とも森茉莉とも違い、ちっとも面白くないのはなぜかしらん。芯からにじみ出る食世界観を求めるのは無謀だとしても、文章に媚や嫌味があるわけでもないのに苛立ちを繰り返し覚える。やや自己満足げな雰囲気、有閑マダムの同意を得そうなあたりが癇に…

小川洋子

カラーひよことコーヒー豆 2009 ☆☆☆ 失われていたものを手に取る感触。懐かしさではなく優しさ。そよ風のような親しみで、私はすっかり好きになった。夜明けの縁をさ迷う人々 2007 ☆☆☆ 偶然の祝福 2000 ☆☆☆☆ 日常の隙間にある物語。歪みも優しさも何もかも、…

人生ベストテン 角田光代 ☆☆☆

「登場人物たちと同じ行く当てのなさを僕自身も抱え込んでいる」。帯にかかれたイッセー尾形の言葉はそのまま私に通じた。角田光代の小説の心地よさはある種の連帯感だ。現代的、都会的で、希薄な人間関係とおきざりの内面。日常のちょっとした突起物にはじ…

TVピープル 村上春樹 ☆☆☆☆

たどっていたはずの真っ当な道筋は、やがて理の通らない次元をゆく。 微妙なズレに覚える違和感。それもじきに立ち消え 理のとおらない時空こそ、本来だったと受け入れる。 いびつな土壌をもつマルケスやリョサとの違い 理が変容していくさまが村上春樹らし…

TPP入門 日本経済新聞社

野田政権時代の解説本。少々古いのですが入門にはうってけでした。PRO/CONがまとまっています。グローバル化による、あらゆる側面の勝敗。国民をまもってきたネイションは解体し、世界を舞台に個人戦がはじまっています。 国家としての旧態からの脱却できず…

葉桜の季節に君を想うということ 歌野晶午 ☆

いけすかないなーと読み始めてそのまま終わった小説。書き言葉ならではの、小説の前提を覆す構成は面白いのですが、一発屋というか、ルール違反というか。私はやはり、オースターのような緻密さを求めます。(週末ミュージシャンMA氏推薦図書)

NHK美の壺/枯山水 ☆☆ 13/10/29

<晩秋、具象と抽象の狭間へ>中学の修学旅行は奈良・京都だった。お得意の旅程つくりと、苦手の行動班つくりで必死だったから、寺社や庭園の予習なんて思い至りもしなかった。空っぽの頭とこころでみた枯山水はどうだったのだろう。 中途半端な知識と委縮し…

NHK美の壺/長崎の教会 ☆☆ 13/10/31

<早春、長崎の玉手箱をたずねて>高校の修学旅行は巡礼の旅だった。広島、萩、長崎と、人々の想いの跡をたどり、みなでハレルヤを歌う。ほかにおぼえているのは教会建築だ。広島の世界平和記念聖堂は、厳かな篤さへの畏れ 長崎の日本二十六聖人殉教記念館は…

ひとり暮らし 谷川俊太郎 ☆☆ 13/10/27

ふたり暮らしをはじめた同期が残していった一冊。 「葬式には未来というものがないから何も心配する必要がない」と谷川俊太郎はいう。葬式をあまり知らないが、私も結婚式は苦手だ。演出が欺瞞と商売っ気に満ちている。 物語には救いを、人生には幸せをと、…

きょうも、いいネコに出会えた 岩合光昭 ☆☆ 13/10/30

いきつけのランチレストランで手に取った一冊。1枚写真を繰るごと、感覚のあたらしさを感じた。 視点を低く、焦点をきゅっと絞る。ネコの眼でこんなにもかわる、時間のはやさ、光のタッチ、ネコとひとの表情。

終の住処 磯崎 憲一郎 ☆☆

思わせぶりな語りのリズム、旋律、響きと収束。それらをなめることはできたけれど、内奥になにかを見出すことはできませんでした。

死に急ぐ鯨たち/方舟さくら丸 安部公房 ☆☆☆

見えない毒に侵されながら「おもてなし」をする国。この異様な終末を正鵠に射ていた。今、ぜひ読みたい安部公房の小説、評論。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・明日は今日のようにやってくる。逃れられない危機の存在を知っていても、…

日本人の知らない日本語 ☆☆

きれいなお姉さんから貰った本、二冊目。外国人のための日本語学校が舞台。あるある、そういう外国人の際どい質問!しんどい質問!笑って済ませられないけれど、止まらぬ苦笑い。 言葉は生き物、そして生物。交配し、腐敗もします。

日本語を書く作法・読む作法 阿刀田高 ☆☆☆

◆母語のこと ◇英語を母語とする人口は多くはないはずだ。アジアでは日本語、フランスやイタリアの山奥ではドイツ語が案外役立つ。言葉の地図を彩る筆は、統治の禍根だ。 ◇観光国アイスランドでは、警備員や主婦まで、誰しも英語が堪能だ。現地語を聞く機会と…

カンブリア宮殿 村上龍×経済人 社長の金言2 ☆☆

■日本を支えてきた会社人とは朝は5時起き、夜も遅く、下手したら土日まで、真面目なサラリーマンをしている。ところがいまだ、時折違和感を感じる。育った環境のせいだろう。けれども最近、やっと日本のお家柄、会社風土が判ってきた。会社員を謳歌している…

真昼のプリニウス 池澤夏樹 ☆☆☆☆

アルプスの話を書いて、しめっぽくなった。やさしく、けれども気高くありたい。 「真昼のプリニウス」の主人公は、その不器用な生真面目さが私に通じる。火山学者である彼女のアイスランド留学の計画、水泳をする何気ないシーン。そういったひとつひとつにも…

ディズニーの隣の風景 オンステージ化する日本 ☆☆☆

なにかもがイベントだ。農業、山歩き、料理、飲み会。当たり前だったはずの生活が、すべて商品化されている。そう仕立てなければ人の関心が向かない、商売にならない、自分の意味がない。強迫的な連鎖。「オンステージ化」する日本に辟易している。 幸い、ア…

私の幸福論 宇野千代 ☆☆☆

幸せの言葉をきく 縁起のよさでいえば、私の苗字はまちがいなく世界一。一生手放すまい。名前負けしないよう、ちょっとした気負いがある。 「WLB」、「○○歳までにすべき○○のこと」、「○○力」云々。漫然と幸せへの強迫観念をかりたてるだけの標語にはくたびれ…

国家の品格 藤原正彦 ☆

岡潔の焼き直し。西洋を知った数学者の典型です。村上陽一郎の「教養」、藤原正彦の「品格」など、わたしには仰々しくマニッシュな思考に思えて、日本人的「情緒」は退散しそう。なにも語らず掲げず、慎ましく凛とありたい。と、ちいさく反発しても、藤原正…

風葬の教室 山田詠美 ☆☆☆☆

「鳥獣戯画という素敵な絵を社会科の教科書で見たことがあります。先生が黒板に私の名前を書いています」 唐突にはじまるドラマは、急激に深度と硬度をまし、読み手自身の過去に食い込んできます。

ふつうがえらい 佐野洋子 ☆☆☆

小気味よいヨーコ節、びしびし来ます。女性らしい生命力に満ちたやさしさを、そこに確かに感じます。 須賀敦子、森茉莉、佐野洋子。出自はさまざまですが、彼女たちの描く少女時代はとても生き生きと伝わります。須賀敦子の黄色がかった情景、森茉莉は父鴎外…

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 村上春樹  ☆☆

時間と場所。断たれつながり、遡り、また流れる。 短い小説ではありますが、たたまれた時間と場所に身を委ねて読めました。 予想通り、登場人物の自意識に毎度の疲れを感じますが、今回は主人公に若干の共感―年齢や「つくる」ことへの体質―はあったかもしれ…

三島由紀夫レター教室 ☆☆☆☆

手紙のやりとりで構成された群像劇。渦巻く感情と思惑、ベタな恋愛があれば、ちょっとしたサプライズもあって、愉快痛快。(読書倶楽部推薦図書) ・・・・・・・・・・・・・・・・「今の若い人は、言葉以外の経験のところで詩の感覚をつかんでいくんじゃな…

ペンギン・ハイウェイ 森見登美彦 ☆☆

「泣くな、少年」 郊外の新興住宅地に突如あらわれたペンギンたち。単なる珍風景ではすまなかった!つぎつぎにつながるたくさんのエレメント。それはちょうどワームホールのように。個性的で、でも「たいへん」親近感のわくキャラクターが織りなす一夏のファ…