2012-03-01から1ヶ月間の記事一覧

ゼイタク 

年度末、まにあわせの代休。ドアノー展@恵比寿・東京都写真美術館 ひとがいる、ひとといる。その温かみがあふれる。パリや郊外の道端、家、店。文化だけではない、生活のあつみ。写真家の主体が入りすぎず、鑑賞者の主体も入れずして。ミラフローレス@恵比…

おとな二人の午後 塩野七生・五木寛之 ☆☆

おとな二人、というより、妖怪二人でしょうか。面白いのですが、少々鼻持ちならないしお勉強にならないので☆は控えめ。ただ、五木寛之のあとがきのエッセイを読んだとき、ああもう、本当にうまいなあ、とくやしくすら思いました。対談集はけっこう好きで、今…

ユタと不思議な仲間たち 三浦哲郎 ☆☆☆☆

三浦哲郎にはいつも、「うた」がある。東北のすこしもの悲しい「詩」が、のびやかで小気味よい「歌」となった、児童文学。純粋さにちょっと大人びたところの混じった主人公、キャラ立ちした座敷わらしたち。私も仲間にしてほしい!大人って、仲間のいない生…

思考の整理学 外山滋比古 ☆☆☆

行きつけのバーで本を読み、手帳に言葉を書き写していた。すると、「君、メモ魔だねえ」。声をかけてきたのは初老の男。悪名高い有名ゴシップ誌の編集長だったという。「ほう、建築やってるの、わりに字が汚いじゃない」。メモ魔諸君、読書家諸君には物足り…

蜘蛛の糸 芥川龍之介 ☆☆☆☆☆ 

なんてことはないあらすじで、わずかなできごとを描くのみ。その中で登場人物の思いの辿り道は屈折し、それがわかりすぎるくらいに読み手に伝わる。すごい。人間に、物語に気骨を感じる。やっぱり、芥川龍之介がすごい。(収録)鼻/芋粥/蜘蛛の糸/杜子春…

ウェイティングリスト 3月 追加要員

古本屋で思わず購入。これだけ買って1200円。日本文学全集が100円で買えるなんて、うれしいやら、なげかわしいやら。太宰治集/幸田文集/大岡昇平集/井上靖集/ことばの歳時記(金田一春彦)/コルシア書店の仲間たち(須賀敦子)/朱の丸御用船(吉村昭)…

ウェイティングリスト 3月

残留組を見ると、生活の実態や疲れ具合がよくわかります。 八月の光(フォークナー)=集中して読む時間がない/アルケミスト(パウロ・コエーリョ)=旅先で読みたい/自家製文章読本(井上ひさし)=ちょっと飽きた 新顔は、リカルド・レイスの死の旅(サ…

銀河鉄道の夜 宮澤賢治 ☆☆☆☆☆

なにげない言葉が、ひとつひとつ、こころによりそう。 (どうして僕はこんなにかなしいのだろう。僕はもっとこころもちをきれいに大きくもたなければいけない。あつこの岸のずうっと向こうにまるでけむりのような小さな青い火が見える。あれはほんとうにしず…

そるとでジャズ・ライヴ 12.03.10

「地元武蔵野音大卒パワフルで切れ味鋭い演奏が魅力のアルトサックス奏者高橋里実さん」ほか素敵なみなさんのライブ。オリジナルナンバー「A DAY-FLY カゲロウ」が印象的でした。カゲロウ、ときいて儚さを思う人がいる。力強さを奏でる人がいる。高橋さんの…

旅をする木 星野道夫 ☆☆☆☆

クリスマスに妹にあげた本。実は自分が読みたかったのだ/いまの私に枯渇するものがわかり、すっとする。言葉も思考もないところ、あたたかさと深さだけの場所に埋まりたい。/この本は素直で、なにかを差し出す。シンプルにひとに与えられるものを紡ぎたい…

文明の生態史観 梅棹忠夫 ☆☆☆

1960年前後にかかれた「文明の生態史観」他。東洋・西洋の構図ではなく、その間に「中洋」をとらえることで、旧大陸の東西の端に位置する「第一地域」、古代文明の地である中洋と周辺の「第二地域」のモデル化を行う。なるほど、欧米アカデミズムのつくった…

フラメンコ・フラメンコ @ル・シネマ ☆☆☆☆

鮮烈。緊張と揺らぎ、張りつめた筋肉や弦から解放されるエネルギー、皺ひとつにこめられる時間、個と集い。生から死、ふたたび生。映画の構成はきちんとループをなす。最後にそれをふっと開いてみせ、観衆が劇場から街へと還ってゆける仕掛け。奏でる、書く…

銀の匙 中勘助 ☆☆☆☆☆

玉手箱である。浦島太郎はどんな心地でそれを開けたのか。カイヨワはいかにそこに、あれほどの宇宙を込めたのか。か細く、失われたものたちが遊ぶ時空間。本作では、玉手箱の蓋が自ずとやさしく開かれる。さっと薫るのははるかぜか、蛤のみせる夢か、呼び覚…

IN THE SOUP ☆☆☆

映像がきれい。しかし予定調和的なプロットでもある。昨日は大雪の東京。ニューヨークのそれとは似つかない。