2012-10-01から1ヶ月間の記事一覧

美しき日本の残像 アレックス・カー 朝日文庫 ☆☆☆☆

この国を「醜悪」というのは簡単だ。私は、アメリカ人の著者に「一端を担ったのはあなたの国でしょう」と返したくなる。ただ、日本にくらし、古典芸能に造詣の深い著者に対し、私は何ら自信を持ちえない。日本人であることすら、少しの保証にもならない。手…

あらためて教養とは 村上陽一郎 新潮文庫 ☆☆☆

祖父は英文学の学者だった。大学在籍中は戦時下で、英文学科に前後して哲学科も出たはずだから、私と同じ歳のころ、28ではまだ駆け出しの教師だったと思う。 声楽家顔負けの美声を、しっかりとした骨に響かせる。聞きなれたアメリカ英語とは異質のイギリス…

覚えていない 佐野洋子 ☆☆

佐野洋子らしい爽快感がない、全くない。すがすがしさと、不快感は紙一重。

プリンシプルのない日本 白洲次郎 新潮社 ☆☆☆

いっとき白洲次郎・正子が流行った。なるほどな、と思う。日本は今も「戦後」だ。 私がぼやぼやしているうち、何故か政界は「阿部さんお帰りなさい」モードで、野田さんはといえば、相変わらずむくんだ顔してる。政治と金に私は疎い。

ある新書

働き方や女性の生き方を「説く」本はやたら多い。たまに読んでます、ゴシック体だけ拾い読めば賞味10分くらい。今日は3冊流しました。およそ私でも書けることが書いてあるので、時間は浪費しないよう、この感想文も推敲しないつもり。うち一冊は、超大手…

ロッタちゃん

ちょっとわかってしまいました、私のドイツ語でのお返事JaとかNeとか、スウェーデンのこの五才児?レベル!?スウェーデン語ってこんなドイツ語に近いんだ。びっくり。 「なんでもできちゃうの」ってロッタちゃん、小生意気でかわいいヨ。さりげない色使い、…

シズコさん 佐野洋子 ☆☆☆☆

重かった。佐野洋子節に救われてはいるけれど。 ひとりの女性が、自分の生をいきる女であり、ある女性の母であり、戦中戦後の日本の女そのものでもあった。やっぱり、重いんだと思う。うまく云えない。

「アンソニー・ブラウン展―ゴリラが好きだ―」@いわさきちひろ美術館

イギリスの国際アンデルセン賞受賞画家。常識的大人を自負する私はギクリとする。作家の偏愛するゴリラたちは実に人間くさく、ウィットが辛辣だ。日本の「カワイイ」文化、漫画文化とは違う、アイロニーの文化だろうか。 企画展の副題でもある代表作「ゴリラ…

アスプルンドの建築 北欧近代建築の黎明 ☆☆☆

近代建築の論点の特異性。北欧の図書館を紹介した実務的な本を読んだあとでは、ことさらそれを思う。個別的要素(気候、地理、社会構成員等)の一切を近代建築は捨てるが、建築の使い手(生身の市民、移民、司書)にとってはそれが全てだ。 建築に奥行が生ま…

「古道具、その行き先―坂田和實の40年―」@松涛美術館

艶めかしい白井晟一の異空間に会するは古道具たち。しげしげと鑑賞するもつかの間、「一体どこまで真面目でどこから洒落なのだろう」。BC20C(!)という代物、教会や何かを思わせる異物・遺物の取り合わせ。センスの確かさはわかる。でも「見立て」る人たちの…

TOKYO建築50の謎 鈴木伸子 中公新書 2010 ☆

東京まちなか散歩気分で。 ゼネ勤務の私には「それほんと?」というくだりも多々あり。でもあらためて、東京とはほんとうに強大なダイナミズムがはたらいている空間だと確認しました。完全にのまれています。 余談ですが、先日ドイツ人アーキテクトは少し恥…

戦前日雇い男性の対抗文化―遊蕩的生活実践をめぐって― 藤野裕子

■戦前日雇い男性の対抗文化―遊蕩的生活実践をめぐって― ■〈実践〉の世界へのアプローチ 藤野裕子氏の本研究は、「男性労働者の遊蕩的で無頼的な生活実践の裏に「男らしさ」の価値体系が通流することを明らかにし、それを通俗道徳の欺瞞性に対する対抗文化と…

貧乏サヴァラン 森茉莉 ☆☆☆☆

鼻につくというか、鼻もちならないというか、それでいて、あるいはそれゆえ、愛さずにはいられない。こんな一文がある。欧羅巴人が鳥や獣の肉を食いちらし、獣の血のような葡萄酒の杯を傾ける、一種執拗な、重い感じは、欧羅巴の絵や彫刻、文学、音楽、すべ…

文明のなかの科学 村上陽一郎 ☆☆☆☆

◆カインとアベル カインとアベルは昼食をともにしていた。明治通りの華屋なるB級中華料理屋。そこで30をとうに過ぎた大人ふたりが、名物の麻婆豆腐を口にするのも忘れ、ディスカッション、というよりは喧嘩を始めた。「Why?」が口癖のカインは顎が割れ気味…

腐れ縁のなれの果て

孤独歴の長い私にも腐れ縁というものがある。まずは早起き君、それに続くは不眠君に深酒君、最後に本の虫である。輩がすっかり結託し、今日はまこととんでもない事態となった。本を2冊、小論記事2本を読了。先日、早稲田でのアカデミックな夕食が直接の刺…

建築家の講義 ルイス・カーン  ☆☆☆

本気で「本質」を問うこと、長らく忘れている。 公共住宅の設計に充てた前半生、そして1951年以降のモニュメンタリな作品。それを必ずしも異色だとは思わない。当時のアメリカ社会を真っ当に受けた経歴だと想像する。が、実のところカーンを全く知らず、彼自…