美しき日本の残像 アレックス・カー 朝日文庫 ☆☆☆☆

この国を「醜悪」というのは簡単だ。私は、アメリカ人の著者に「一端を担ったのはあなたの国でしょう」と返したくなる。ただ、日本にくらし、古典芸能に造詣の深い著者に対し、私は何ら自信を持ちえない。日本人であることすら、少しの保証にもならない。手放しには評価も批判もできない本だ。
この本の描く日本は、バブル前後。すでに過去である。(初版は1993年)醜悪さはすでに増幅しているだろう。明るい兆しが宿るとすれば、バブルを知らない今のわたしたちの内かもしれない。ささやかな希望を抱いている。