SOCIETY

世界の美しさをひとつでも多く見つけたい 石井光太 ☆☆

教科書のような一面的な擁護や非難はたやすい。一行から削ぎ落とされる多面的な現実には、計り知れない物語の連鎖がある。現実のままを伝えんとする著者の姿勢がストレートにわかる一冊。「現場を背負う責任」のひとことに集約される覚悟が凄まじい。「物乞…

弱さの思想〜たそがれを抱きしめる(辻信一+高橋源一郎、大月書店)

「女性と建築」をテーマに、大学で表現におけるマイノリティの研究にとりくんだ。成人白人男性か否か、欧米/日本、作家/職人という二極に図式化するのは容易だが、修士論文では、大正時代の女性と建築の数奇な結節点を描いた。(主婦という新階層、カリスマ…

わたしはマララ マララ・ユスフザイ ☆☆☆☆☆

故郷の山、客人が溢れる家の風景、人々に這いいる脅威と恐怖、無力と矛盾の国がある。弟や親友と喧嘩をし、背が伸びてもっといいスピーチがしたいと願う。ひとりの少女の眼をかり、自らの心でみる。宗教や国のいかんを問わず全ての隣人へ深い感謝を持てます…

「全身○活」時代 大内裕和+竹信三恵子 ☆☆

就活、婚活、保活からみる社会論―バブル以前/以降の「世代間断層」。アベノミクスは、高度経済成長時代を忘れられない世代のための「夢よ、もう一度」にほかならない。まったく同感です。 いち女性ワーカー、いち土建屋として、昨今の潜在的な女性労働力、…

心に迫るパウロの言葉 曽野綾子 ☆☆☆☆

残るでも、響くでもない、心に迫る言葉である。自ら正しいと考えるものを信じて行動することは、正しい。でも自らの正しさを他人に押し付けたり、求めたりしてはいけない。判っているはずの教えがいかに難しいことか。いまの私がパウロの言葉に再び出会えた…

日本史の謎は「地形」で解ける【文明・文化篇】 ☆☆☆ 竹村公太郎

「謎はすべて解けた」と決めの台詞が頼もしい著者は国交省出身の土木マン。家康が読み込み、整備した江戸の地勢、エネルギー(木材)システム、はたまた日本を出てピラミッドまで。土木マンらしい歴史に対する身体感覚はさすがである。なかでも水道史にみる…

私が伝えたい日本現代史1960-2014 田原 総一朗

歴代総理史を通して現代史をみる。たいへんわかりやすい。(2014/ポプラ新書/6月読了)

貧困の光景 曽野綾子 ☆☆☆

本当の貧しさをわたしたちは知らない。清貧とは違う、根本的な腐敗。(2007/新潮社,140523読了)曽野綾子講演会 【想起、理想】その晩本書を貪ったのは講演会に感化されたからだった。テーマは「世界の中の日本」。ミッションスクール時代に戻った感覚で、忘…

○に近い△を生きる 鎌田實 ポプラ新書 2013 ☆☆

十年後は見えない。建築の未来も、目の前の施主に差し出すかたちも見えない。○を目指すはずが焦りに終わる。 ・△を生きることは新しい知恵ではない。土と火から器をつくり、季節を食に再現する田舎暮らしも△のバランスにあるし、戦後、模索と失敗を重ねた祖…

ライカでグッドバイ―カメラマン沢田教一が撃たれた日 青木冨貴子 ☆☆☆ 

沢田教一を終いには銃弾へと導いたもの。それは大仰な使命感でも明確な目的意識でもなく、抗えない引力でした。物語は自らつむぐらものではない。はじめに定まっていて、そして後から見出されるもののようです。彼をはじめ、ジャーナリストやカメラマンが大…

TPP入門 日本経済新聞社

野田政権時代の解説本。少々古いのですが入門にはうってけでした。PRO/CONがまとまっています。グローバル化による、あらゆる側面の勝敗。国民をまもってきたネイションは解体し、世界を舞台に個人戦がはじまっています。 国家としての旧態からの脱却できず…

日本人の知らない日本語 ☆☆

きれいなお姉さんから貰った本、二冊目。外国人のための日本語学校が舞台。あるある、そういう外国人の際どい質問!しんどい質問!笑って済ませられないけれど、止まらぬ苦笑い。 言葉は生き物、そして生物。交配し、腐敗もします。

カンブリア宮殿 村上龍×経済人 社長の金言2 ☆☆

■日本を支えてきた会社人とは朝は5時起き、夜も遅く、下手したら土日まで、真面目なサラリーマンをしている。ところがいまだ、時折違和感を感じる。育った環境のせいだろう。けれども最近、やっと日本のお家柄、会社風土が判ってきた。会社員を謳歌している…

よみがえれ!夢の国アイスランドA・S. マグナソン ☆☆

「よみがえれ!夢の国アイスランド」と私の旅のはじまり2 本書の刊行から間もない2008年、アイスランドの経済が破綻し、2010年には火山の大爆発で空の交通網が大混乱した。それまでこの国を認識していなかった日本人は私だけではないだろう。その後の数年間…

ディズニーの隣の風景 オンステージ化する日本 ☆☆☆

なにかもがイベントだ。農業、山歩き、料理、飲み会。当たり前だったはずの生活が、すべて商品化されている。そう仕立てなければ人の関心が向かない、商売にならない、自分の意味がない。強迫的な連鎖。「オンステージ化」する日本に辟易している。 幸い、ア…

国家の品格 藤原正彦 ☆

岡潔の焼き直し。西洋を知った数学者の典型です。村上陽一郎の「教養」、藤原正彦の「品格」など、わたしには仰々しくマニッシュな思考に思えて、日本人的「情緒」は退散しそう。なにも語らず掲げず、慎ましく凛とありたい。と、ちいさく反発しても、藤原正…

【講演会】浅野孝信さんにきく 世界一幸せな国「ブータン」と建築

身体感覚の距離感を思う勤務先で講演会を企画しました。講師は、ブータンにて伝統建築の調査・保護活動に携わった浅野孝信さん。 空には気高き山がつきぬけ、彩りと躍動に溢れたチベット仏教の祭祀が魅惑的です。遠いこの国には、かつての日本をみるかのよう…

ブータン、これでいいのだ 御手洗瑞子 ☆☆

“ブータンってみんな幸せそう―現地で公務員として働いた著者が語る、「幸福」の国の秘密”(カバーコピーより)・・・・・・・・・・・・・・・・講演会の企画にあたり、ブータンのにわか勉強をはじめた。軽い語り口だが、「なるほど」と納得する知見もある。…

犬と鬼 知られざる日本の肖像 A・カー ☆

判っていることを悉く言い立てられるのはいい気がしないもの。「日本は日本でなくなった」―この国の誤った近代過程を糾弾する名著。・・・・・・・・・・・・・・・・予測されたことだが、本書の一字一句を追えなかった。 現実。ものをつくろうとしても、本…

コンプライアンスが日本を潰す〜新自由主義との攻防〜 藤井聡 ☆

アメリカ・新自由主義への服従がもたらす日本崩壊のシナリオ。 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 建築が大量生産品ではない以上、市場の競争原理に価格の適正化を期待するのは乱暴だ。著者は、建設業における談合は日本社会全体にとっての必要悪、いや悪で…

宗教はなぜ必要なのか 島田裕巳 集英社インターナショナル ☆

神道・仏教、新渡戸稲造「武士道」にみる日本人のモラル、村落共同体と二宮尊徳「報徳思想」、そして神の代替としての究極の親、祖先。とりかかりやすい入門書。 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 「あなた、宗教は?」おなじみの質問だ。「はっきりしない…

14歳からの社会学 宮台真司 ちくま文庫 ☆

「みんな」という社会の共通前提の消滅に始まり、個々人が、他者からの「承認」も「尊厳」も得られず、「自由」に試行錯誤できない現実。実に正しい。だから良薬、とは限らない。本書の意図に反し、14歳が考えることを諦めないことを願い、池田晶子さんの…

WORK SHIFT リンダ・グラットン プレジデント社 ☆☆

“CHANGE”はどこにいったのだろう。あの言葉は大きな期待をもたらした。本書の掲げる“SHIFT”は似て非なるものだろうか。生き方、働き方を自己の責任で個々人がかえようとするとき、それはコインの裏表をひっくり返すようなものではなく、金貨をおもって銅貨を…

都市の感触 [1987] 日野啓三 ☆☆☆☆☆

氷解。 あのころ―村上春樹の嘘くさいにおい、伊東豊雄の軽さと透明感。「地下のしみ」はその全てであった。実に、自分自身の感触として、ようやくわたしは80年代を諒解した。現実。 書きたかったものを読んだという鳥肌。ドッペルゲンガーは実在する。あの影…

GANTZ SUPER!

wow!とほんとに口に出してびっくり嬉しかったのは今年はじめてか。うん、ぜったいそうだ。嬉しくて書き留めました。まさか、ダメモトで出したメール、ドイツから返信が来るとは。Afterwards 12月1日 仙台へ。吹雪く福島を北上、宮城に入りパッと晴れ渡る空…

17歳のための 世界と日本の見方 松岡正剛 春秋社 ☆☆☆

物語と言葉がうまれ、宗教、文化が生成されるさまを俯瞰しています。現代の世界と日本をみる直接のヒントではありませんが、そのベースを大変わかりやすく案内している本です。

美しき日本の残像 アレックス・カー 朝日文庫 ☆☆☆☆

この国を「醜悪」というのは簡単だ。私は、アメリカ人の著者に「一端を担ったのはあなたの国でしょう」と返したくなる。ただ、日本にくらし、古典芸能に造詣の深い著者に対し、私は何ら自信を持ちえない。日本人であることすら、少しの保証にもならない。手…

あらためて教養とは 村上陽一郎 新潮文庫 ☆☆☆

祖父は英文学の学者だった。大学在籍中は戦時下で、英文学科に前後して哲学科も出たはずだから、私と同じ歳のころ、28ではまだ駆け出しの教師だったと思う。 声楽家顔負けの美声を、しっかりとした骨に響かせる。聞きなれたアメリカ英語とは異質のイギリス…

プリンシプルのない日本 白洲次郎 新潮社 ☆☆☆

いっとき白洲次郎・正子が流行った。なるほどな、と思う。日本は今も「戦後」だ。 私がぼやぼやしているうち、何故か政界は「阿部さんお帰りなさい」モードで、野田さんはといえば、相変わらずむくんだ顔してる。政治と金に私は疎い。

ある新書

働き方や女性の生き方を「説く」本はやたら多い。たまに読んでます、ゴシック体だけ拾い読めば賞味10分くらい。今日は3冊流しました。およそ私でも書けることが書いてあるので、時間は浪費しないよう、この感想文も推敲しないつもり。うち一冊は、超大手…