ライカでグッドバイ―カメラマン沢田教一が撃たれた日 青木冨貴子 ☆☆☆ 

沢田教一を終いには銃弾へと導いたもの。それは大仰な使命感でも明確な目的意識でもなく、抗えない引力でした。物語は自らつむぐらものではない。はじめに定まっていて、そして後から見出されるもののようです。

彼をはじめ、ジャーナリストやカメラマンが大挙しておしかけたベトナムには、土地そのものが熱病におかされたような、異様な空気が満ちていました。わずか50年前のこと、おどろきました。

今日、争いや緊張が消えたわけではありません。むしろそれは複雑にそして身近になっているはず。にもかかわらず、他人事にしか聞こえない国のアナウンスメント、ラジオの報道。時代を自分のものとしてとらえる想像力が、責任として必要です。