弱さの思想〜たそがれを抱きしめる(辻信一+高橋源一郎、大月書店)

「女性と建築」をテーマに、大学で表現におけるマイノリティの研究にとりくんだ。成人白人男性か否か、欧米/日本、作家/職人という二極に図式化するのは容易だが、修士論文では、大正時代の女性と建築の数奇な結節点を描いた。(主婦という新階層、カリスマ主婦羽仁もと子、建築家ライト、日本の建築界のダイナミックな関係)
本書は、様々な社会的弱者を中心としたコミュニティを多く紹介している。「世話する―世話される」構図ではない、有機的な関係が築かれいることに驚く。
私たちは生まれたその日から社会の競争に晒され、階級分けされた環境で育つ。わが家は自営業だったが、級友の父親たちには自営業も公務員もいなかった。典型的な4人の核家族ばかりで、不幸にして片親を早くになくすと「かわいそうな子」になるのだった。その感覚は私に染みついていた。社会に出て知り合った友達が、父親を亡くしているとあるとき言った。私は気付かないうちに「かわいそうに」という顔をしていたようだ。「そんな顔しないでいいよ」とけろっと言われたことが忘れられない。私たちの多くは、多様な在り方を知らずに育ち、敗退への恐怖におののき、負けるその日まで走り続ける。
土着の建築は美しい。そこにある土と太陽がつくる家。木陰につるされたハンモック。勝ちでもない、負けでもない。そういう建築と、マイノリティの有機的共同体はどこかで繋がっている。