2013-05-01から1ヶ月間の記事一覧

国家の品格 藤原正彦 ☆

岡潔の焼き直し。西洋を知った数学者の典型です。村上陽一郎の「教養」、藤原正彦の「品格」など、わたしには仰々しくマニッシュな思考に思えて、日本人的「情緒」は退散しそう。なにも語らず掲げず、慎ましく凛とありたい。と、ちいさく反発しても、藤原正…

風葬の教室 山田詠美 ☆☆☆☆

「鳥獣戯画という素敵な絵を社会科の教科書で見たことがあります。先生が黒板に私の名前を書いています」 唐突にはじまるドラマは、急激に深度と硬度をまし、読み手自身の過去に食い込んできます。

アイスランド小史 G・カールソン 早稲田大学出版部

□観光立国 極東の島・日本から9,000キロ。北西の最果て島・アイスランドといえば、火山と温泉、大地の裂け目「ギャオ」、オーロラ。大自然を武器に観光産業が盛り上がっています。(森林は殆どありません。開拓時代に耕し尽くしたせいだそうです。)今回は真…

ふたりのイームズ ☆☆☆

ふたりの物語は、アメリカの時代そのものの体現する。世界大戦が生んだ技術史、大戦後の女性史、そして冷戦がつくったメディア史。かれら自身をもふくめたすべてが作品であり製品だ。 画面構成はポップ、作品構成はシンプルにして、デザインをとりまく問題を…

ふつうがえらい 佐野洋子 ☆☆☆

小気味よいヨーコ節、びしびし来ます。女性らしい生命力に満ちたやさしさを、そこに確かに感じます。 須賀敦子、森茉莉、佐野洋子。出自はさまざまですが、彼女たちの描く少女時代はとても生き生きと伝わります。須賀敦子の黄色がかった情景、森茉莉は父鴎外…

36°5

幡ヶ谷のライブハウスにいってきました。高らかに想いを歌う、男たち。うん、物語はつくるものだ。

ヴァレンタインズ オラフ・オラフソン ☆

あるものは留まり、またあるものは異国に絆を育む。自己と他者を内省する、12の恋人たちの短篇集。身体と精神を包むのは殻だろうか、膜だろうか。帰るところの家族とは、故郷とは。・・・・・・・・・・ 異色の作家への期待に反し、残ったのは倦怠感。こう…

【講演会】浅野孝信さんにきく 世界一幸せな国「ブータン」と建築

身体感覚の距離感を思う勤務先で講演会を企画しました。講師は、ブータンにて伝統建築の調査・保護活動に携わった浅野孝信さん。 空には気高き山がつきぬけ、彩りと躍動に溢れたチベット仏教の祭祀が魅惑的です。遠いこの国には、かつての日本をみるかのよう…

遠い水平線 タブッキ ☆☆☆☆

時間のにおい 一寸、私は指先を舌でしめらし あるはずもない風へとかざすけれど 仕組みはわからずして そうなることはしっていて 遠い遠いのはどの感覚 漕ぐように時をすすむことを そよぐように時のすすむことを 水平線は瞳から遠く逃げ その隙間に私がいる…