アイスランド小史 G・カールソン 早稲田大学出版部

□観光立国
極東の島・日本から9,000キロ。北西の最果て島・アイスランドといえば、火山と温泉、大地の裂け目「ギャオ」、オーロラ。大自然を武器に観光産業が盛り上がっています。(森林は殆どありません。開拓時代に耕し尽くしたせいだそうです。)今回は真面目に歴史の勉強。


□小国の小競り合いのそばで
大陸の果てで、アイスランドは長いことデンマークに統治されてきました。19世紀に独立運動が高まり、自治法が制定されたのは1874年。デンマークの国王主権下で立憲君主国、アイスランド王国として1918年に独立し、完全独立はようやく1944年のことです。
統治下といっても事実上放任されていた時期があったり、逆に大陸の小競り合いに巻き込まれたり、領海問題ではイギリスの干渉を受けたり、孤島の歴史はなんだか「ウロウロ」とした印象です。
文化面では古ノルト語による抒情詩「サガ」が有名ですが、ほかに目立ったものはなさそうです。ただ、アイスランドが他国に翻弄されながらも高い自律性を保ったのは、島という地勢ばかりでなく、古ノルト語を保ったためだといいます。言葉が歴史の根底にある、なるほど。


□圧倒的な大国のそばで
同じ島国でありながら、アイスランドと日本は、歴史においても文化においても、その波形が違うように思いました。(戦後のアメリカ軍による過干渉、軍事的立場などは似ているところもありそうですが)かたや中華文明、他方はヨーロッパ文化。文明と文化の存在の深みの差といえるものかもしれません。大国にしてみれば日本は直接統治するまでもない小国であったでしょうし、日本はさほどの干渉も受けずにシルクロードの終着点として、その恩恵を蓄えることができました。


□ふたつの資源
昨今「クールジャパン」なる看板を掲げ、先日は富士山の世界遺産登録も決まりましたが、日本は観光立国として成功しうるのでしょうか。国のビジョンを考えるとき、観光とセットとなるのが資源だと直感しています。1次・2次産業が底力を回復できない場合、消去法的に残るのが観光資源、そしてそれでも小国がしがみつかなくてはならないものがエネルギー資源なのでしょう。小国、アイスランドと、先日かいたブータンがその好事例です。前者は地熱発電、後者は水力発電を国の主軸においています。原発問題を先送りにしている日本。観光立国への道も長いと感じます。