ジプシー・フラメンコ ☆☆☆☆

伝説のフラメンコ・ダンサー、カルメン・アマジャ生誕100年を記念して制作されたドキュメンタリー。(母も私も彼女を知りませんでした。)彼女を大叔母に持つカリメを中心に、歌い手、ギター弾き、そしてカリメの母がステージをつくる。響きあう彼らの魂。(ステージシーンはわずかで残念。)

途中に挿入されるファニートの物語が雰囲気を和まず。生活のちょっとした動きもすべてフラメンコのリズムと振り。少しおっさんぽくも、愛嬌のある顔つき。彼の周りには「よくわからない」人がたくさんいる。鶏に色をほどこす父親はテキヤ?闘鶏屋?この唄のおじさんたちは近所の人?親戚?といった具合。血縁、地縁の強い生き方をみる。

今やフラメンコは芸術、ご婦人の趣味になってしまったが、その原型<共同体そのものであり、生活にあるフラメンコ>をみた。

作品の焦点はフラメンコだけではない。母娘・父子の物語でもある。踊り手としての母を理解し、踊り手として娘の成長をみてとるふたり。ファニートと父親の会話は率直で少し気まま。立派に男同士の間柄だ。初めてのフラメンコシューズをつくりに行く一幕では、赤がいい、白がいいと、移り気なところも微笑ましい。
人対人として向き合う親子を日本ではあまり見ない。独特の甘えの構造ー親はひとりの人間である以前に親であり、子はいつまでも子だ。母の隣で私は少し恥ずかしい思いがした。自立を漸く意識し始めた今、歳も経験も母に追いつけるわけではないが、母との会話は有難くとても楽しい。
ユーロスペース/140823)