2014-08-01から1ヶ月間の記事一覧

世界の美しさをひとつでも多く見つけたい 石井光太 ☆☆

教科書のような一面的な擁護や非難はたやすい。一行から削ぎ落とされる多面的な現実には、計り知れない物語の連鎖がある。現実のままを伝えんとする著者の姿勢がストレートにわかる一冊。「現場を背負う責任」のひとことに集約される覚悟が凄まじい。「物乞…

弱さの思想〜たそがれを抱きしめる(辻信一+高橋源一郎、大月書店)

「女性と建築」をテーマに、大学で表現におけるマイノリティの研究にとりくんだ。成人白人男性か否か、欧米/日本、作家/職人という二極に図式化するのは容易だが、修士論文では、大正時代の女性と建築の数奇な結節点を描いた。(主婦という新階層、カリスマ…

ジプシー・フラメンコ ☆☆☆☆

伝説のフラメンコ・ダンサー、カルメン・アマジャ生誕100年を記念して制作されたドキュメンタリー。(母も私も彼女を知りませんでした。)彼女を大叔母に持つカリメを中心に、歌い手、ギター弾き、そしてカリメの母がステージをつくる。響きあう彼らの魂。(…

わたしはマララ マララ・ユスフザイ ☆☆☆☆☆

故郷の山、客人が溢れる家の風景、人々に這いいる脅威と恐怖、無力と矛盾の国がある。弟や親友と喧嘩をし、背が伸びてもっといいスピーチがしたいと願う。ひとりの少女の眼をかり、自らの心でみる。宗教や国のいかんを問わず全ての隣人へ深い感謝を持てます…

「全身○活」時代 大内裕和+竹信三恵子 ☆☆

就活、婚活、保活からみる社会論―バブル以前/以降の「世代間断層」。アベノミクスは、高度経済成長時代を忘れられない世代のための「夢よ、もう一度」にほかならない。まったく同感です。 いち女性ワーカー、いち土建屋として、昨今の潜在的な女性労働力、…

泥象(でいしょう) 鈴木治の世界 ☆☆☆☆

「使う陶」から「観る陶」へ、そして「詠む陶」へ 言葉に苦しむ、久々の展覧会。具象的で抽象的。端正でおおらかでもある。単体の力強さと、並んで立つ像の均衡。赤土の粒子はあたたかい触感を、白磁をなめる光は透き通った味覚を伝える。徐々に、題を見ずし…

いろ・うごき・かたち アートをめぐる夏の冒険 ☆☆

こどもたちの夏休みは忙しい。読書感想文、自主研究、お絵かきの宿題に美術鑑賞の感想文。小中学生を見据えた本展覧会は、決して子供向けではないものの、作品の寄集め感がある。私が子供だったら感想文のネタには選ばないな。葉山館の良さである、展示室に…

ヘスス・オルテガ グループ フラメンコ ☆☆☆☆☆

母とスペインでフラメンコをみてから8年がたちました。今回はお祝いごとのため(辛気臭い日にしたくなかったので)新宿で母と鑑賞。実力者が揃ったショーに恵まれ、力強さ、技術の高さ、すべてにのまれました。背筋から指先まで緊張をみなぎらせたバイレ。…

佐藤時啓 光―呼吸 ☆☆☆

週末、久々に恵比寿ガーデンプレイスに出向いた。爽やかな夕暮れの風に吹かれ、テラスでビールを楽しむ人が目立つ。開放的で賑やかな雰囲気を抜けると、佐藤時啓の異様な世界観が際立っていた。代表作<光―呼吸>は、佐藤が無人の街や建築に光をかざし、フィ…

夢みる人びと イサク・ディネセン ☆☆☆☆

現実と夢、現在と過去を縦断する不思議な物語3編。「夢見る人びと」と「詩人」の謎めいた女は、「百年の孤独」のレメディオスの昇天を彷彿とさせる。とはいえマルケスやリョサのラテン文学とはまた異なる魅惑的な違和感を秘めている。ゴシックといわれると…

県庁おもてなし課 有川浩 ☆☆

自然に恵まれた(自然しかない)高知を観光地に!県庁「おもてなし課」のラブコメありの奮闘劇。高知を旅行した気分になりました。ざくざくと読み進められるけれど、ライトノベルはやはり苦手。 (角川文庫/読書倶楽部/1408??読了)

にょっ記 穂村弘 ☆☆☆ 

俗すぎて笑いがとまらない。たいのおかしら(さくらももこ)以来かな。鎌倉から新橋までの50分、諦めていつも通り寝よう。笑うアホづら、眠りほうけるマヌケづら。衆目にさらすみっともなさは大差ない。(文春文庫/140802読了/読書倶楽部)

心に迫るパウロの言葉 曽野綾子 ☆☆☆☆

残るでも、響くでもない、心に迫る言葉である。自ら正しいと考えるものを信じて行動することは、正しい。でも自らの正しさを他人に押し付けたり、求めたりしてはいけない。判っているはずの教えがいかに難しいことか。いまの私がパウロの言葉に再び出会えた…

建築家ピエール・シャローとガラスの家 ☆☆☆☆

表題にある「建築家」の表現に違和感がある。シャローの集大成は(幸運にも)「ガラスの家」という建築のかたちをとっただけであり、そこに至る試行と思考を辿ることに展覧会の意味がある。ガラスの家(1927−31)のガラスブロック積。昼は内、夜は外の幻想的な…

TYIN展 ☆☆☆

なぜ前向きな気持ちのあとには虚無感がやってくるのだろう。シャローのメモはネガティブにものとなってしまった。TYINの展覧会はつくることをふたたび信じる勇気をくれる。少し疑念をはさんでしまうのは嫉妬のためだろう。建築をつくるというより、風景をつ…