2012-07-01から1ヶ月間の記事一覧

鉄の骨 池井戸潤 ☆☆☆☆

良質なエンターテイメント。加速するストーリー展開は心地よく、そこにさり気なく張られた伏線は実に上手い。 読み始め、小説のリアリティをついつい査定してしまったゼネコン勤めの私も、いつのまにかドラマにのめり込み、一気に読了。

トスカーナの休日 フランシス・メイズ ☆☆

アメリカの大学で教職につき、詩人である主人公が一念発起、トスカーナに草臥れた家「ブラマソーレ」を買う。休みのたび、地元の職人とやりあいながら理想のわが家とし、庭にたわわになる果実で目と舌を楽しませる。と、小説だと思って読み進めましたが、実…

日本語と日本人 司馬遼太郎(対談集) ☆☆☆

赤尾兜子との対談。和語のしなやかな表現で、リアリズムに徹した正岡子規について。日本文学における彼の特異性をしる。のみならず、厚みがあり、やや屈折する人間性に惹かれた。これは子規をあらためて読まねば、と思う。 家賃と同じくらい、日々の刺身に金…

ヴェネツィアの宿 須賀敦子 ☆☆☆☆☆

大事に、大事にして読んだ。ために、予定より一週間ほど遅れる。彼女の意志の強さをかみしめ、記憶を自分のそれと重ねたどるように、あるいは底のしっかりした靴で石畳を歩くように、古本の粗く黄ばんだ紙を繰るように。語られる言葉と読む行為とが、ひとつ…

明日をひらく言葉 やなせたかし ☆☆☆

「人生はよろこばせごっこ」。これぞ人生最大のよろこび。ほんと、このひとことにつきる。簡単じゃあないけどね。名作「てのひらを太陽に」誕生秘話がなんともいい。その日も徹夜をしていたという四二才の彼はふと、子どものころのように懐中電灯を手のひら…

文学フシギ帖 池内紀 ☆☆☆

大御所鴎外、漱石はもちろん、百輭、幸田文、須賀敦子とわたくし好みの作家がずらり。3、4ページの読みやすい作家評です。大家について書くなんて勇気がいりそうですが、池内さんは実に器用に手頃なネタを見つけてきます。

文学の楽しみ 吉田健一 ☆☆?

こむづかしくて真面目すぎるので断念。文学は文学であってそれ以上でも以下でもない、といったことをいっているのですよね? 白洲正子のエッセイで吉田健一の名が出てきて、同時に携えていた「海からの贈物」が吉田健一訳だったために、すっかり運命的出会い…

日本人と日本文化 司馬遼太郎+D・キーン ☆☆☆☆

対談から40年。今読んでも、日本という国は相も変わらず、哀しいくらい、面白い。内容は目新しくも過激でもないが、身体の一部と化した最良の知識人の造詣に、じんわり感銘を受ける。なにしろ巻末の関連略年表は、西暦600年から日韓併合にまで及ぶ。思わず…

ウェイティングリスト 7月

小澤征爾さんと、音楽について話をする/人はなぜ日記を書くか/文学の楽しみ(吉田健一)/11分間/日本人と日本文化(司馬遼太郎、D・キーン)/そのたイロイロyoku yomu ならぬ yoku nomu 生活が続いています。最悪のコンディションで2012年後半を迎え…