2011-07-01から1ヶ月間の記事一覧

見えない都市 イタロ・カルヴィーノ ☆☆☆☆☆ 贅をつくした玉虫細工

妖艶で変化する味わいは贅を尽くした玉虫細工。あるいは巧みに編みこまれたレースだろうか。その網目に入り込み、少しひいて眺め渡し、さらに細やかなテクスチャを手に取る。実に不思議な体感を伴う。 - 実に見事な小説の構成。解説を読んでなるほどと思う。…

取材始動

中野周辺に住まうこと、10年。近いが故に訪れる機会をつくらなかった、某作家宅。近日、アップ予定。女性作家と建築家。これ、既視感のある構図ではありません?

某 ☆☆☆☆

庭。それに喚起される言葉は広い。 建築。その箱につい自らを閉じ込めがちなわたしたちを、すっと解き放つ一冊。 境界、時間、都市の余白、かたちのないもの、デザインしきれない部分、人々を引き寄せるなにか。そして束の間の純粋な気持ち。 - 久々の前向き…

名づける、とくに動詞

言葉ひとつを忘れないようにしたい。スケッチ上に堂々と! 名づけて初めて認識できる。とくに動詞は想像を喚起する。 (つなぐ、みせる、なんでもいい。単純ならば。) そしてようやく、言葉によって他者との共有を果たすのだ。

取材

前向きな気分だ。どこかに足をのばして書きたくなった。早速、仕事も兼ねてとある郊外の街へ。記事風に書いてみた。(事情により未公開。近日アップ予定。) 書くのは楽しく、そしてこわい。すっかり睡眠不足だ。次いでひとつ改めて認識したこと。「なぜこう…

狼たちの月 フリオ・リャマサーレス ☆☆☆☆

闇と光の相克が、風の叫びと銃声が人物を語り、 男の眼は時間を悲しみと怒りで染める。 「黄色い雨」での言葉の衝撃が、より激しく蘇る。 - リャマサーレスの言葉ほど、身体や時間をつなぎとめるものはないのではないか。歴史そのものでも、架空だけでもなく…

赤朽葉家の伝説 桜庭一樹 ☆☆

「マコンド」だ、「ウルスラ」だ、と興奮を交えながら読み進めた。 結局がっかりしたのですが。(まあ暇つぶし程度には面白いです。) - 地方の町、旧家の女三代記。伝説的な物語性と戦後の日本社会の動きとが(あまり乳化されることもなく)描かれている。露…

ちくま日本文学034 寺田寅彦 ☆☆☆☆

エッセイの名手といえば内田百輭、秘蔵っ子といえば寺田寅彦です。今回再読し、80年前の彼の予見に驚きました。当たり前といえば当たり前の「教訓」なのですが、今の日本を言い当てており、今更ながら「ギクリ」としたわけです。とくに『化物の進化』におけ…