見えない都市 イタロ・カルヴィーノ ☆☆☆☆☆ 贅をつくした玉虫細工

妖艶で変化する味わいは贅を尽くした玉虫細工。あるいは巧みに編みこまれたレースだろうか。その網目に入り込み、少しひいて眺め渡し、さらに細やかなテクスチャを手に取る。実に不思議な体感を伴う。

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実に見事な小説の構成。解説を読んでなるほどと思う。だがそれを技巧的だと思うこともなく、私は言葉のレースにくるまる。敢えて気づこうとしなかったともいえる。無意識のなせる快楽であり、半ば意図的な贅沢。
夢想の都市の数々には時折、ふと具体的な場所性や時間が与えられる。都市は単なる朦朧とした幻には終わらない。突如として現実味を帯び、ぎらり、と玉虫のごとく色がかわるのだ。私はその瞬間ぞくっとしながらも、細やかなレースに身を委ね続ける。