○に近い△を生きる 鎌田實 ポプラ新書 2013 ☆☆

十年後は見えない。建築の未来も、目の前の施主に差し出すかたちも見えない。○を目指すはずが焦りに終わる。
・△を生きることは新しい知恵ではない。土と火から器をつくり、季節を食に再現する田舎暮らしも△のバランスにあるし、戦後、模索と失敗を重ねた祖父母たちの生き様も然り。
・△を積み重ねた結果、日本全体を振り返れば、誤った方向をむいたかもしれない。理想のない△はまずい。○を遠くに見ながら、△を重ねたい。
石井光太氏との対談でアフリカの売春婦の話があった。病気に感染するリスクを知り、なお売春をなぜするのか。否、売春は身を守る手段だという。驚いた。「文脈」を肌で知らないと、一般論と統計学の上での解しか導き出せない。
・世界の今と未来への貢献。鎌田氏のような健康づくり運動や被災者支援はできなくとも、身近な生活とひとを大切に。そこからはじめたい。こんなにも恵まれている、いい仕事ができるはずだ。
・この十年、失われた時間は予想以上にこじれているし、わたしは大人にはならなかった。それでも十年後に限りなく○に近い理想を掲げ、△を重ねてモディファイしていく。
・この手の本はやはり苦手だが、弱ったときには助けになるかもしれない。他人の知恵に耳を傾けられるかが肝心。□140408読了