JAPAN

犬と鬼 知られざる日本の肖像 A・カー ☆

判っていることを悉く言い立てられるのはいい気がしないもの。「日本は日本でなくなった」―この国の誤った近代過程を糾弾する名著。・・・・・・・・・・・・・・・・予測されたことだが、本書の一字一句を追えなかった。 現実。ものをつくろうとしても、本…

聖の青春 大崎 善生 ☆☆

一手、一局、すべてが命がけの覚悟。重篤な病をかかえた棋士・村山聖は、まっすぐに将棋盤に向かい、師匠と仲間と向き合い、己と対峙する。力強く、はかない。 (新潮学芸賞/ストイックランナーMさん推薦図書)

オケ老人 荒木源 ☆

誤って入団したオケは老人だらけ!まんがを読んでいるような軽快さとキャラ立ちでした。それにしても、登場人物たちが、みなクサクサマジメ。作者の人柄なのかしら?(読書倶楽部Uさん推薦図書)

コンプライアンスが日本を潰す〜新自由主義との攻防〜 藤井聡 ☆

アメリカ・新自由主義への服従がもたらす日本崩壊のシナリオ。 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 建築が大量生産品ではない以上、市場の競争原理に価格の適正化を期待するのは乱暴だ。著者は、建設業における談合は日本社会全体にとっての必要悪、いや悪で…

宗教はなぜ必要なのか 島田裕巳 集英社インターナショナル ☆

神道・仏教、新渡戸稲造「武士道」にみる日本人のモラル、村落共同体と二宮尊徳「報徳思想」、そして神の代替としての究極の親、祖先。とりかかりやすい入門書。 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 「あなた、宗教は?」おなじみの質問だ。「はっきりしない…

14歳からの社会学 宮台真司 ちくま文庫 ☆

「みんな」という社会の共通前提の消滅に始まり、個々人が、他者からの「承認」も「尊厳」も得られず、「自由」に試行錯誤できない現実。実に正しい。だから良薬、とは限らない。本書の意図に反し、14歳が考えることを諦めないことを願い、池田晶子さんの…

不揃いの木を組む 小川三夫 ☆☆☆

「不揃いが総持ちで支え合う」からこそ、逞しくなる。塔も、組織も。そして「ヌスミとスベリ」、つまりは気の利いた余裕が要るのもまた、木も人間同士もおなじ。

酒肴酒 吉田健一 ☆☆☆

それでは我々の舌は年をとるに従って荒れて来るのだろうか。それよりもむしろ、我々は先ず三色アイスクリーム、あるいは親子丼に眼を開かれて、次第に複雑な味を覚えていき、そこにも同じ境地を味わうことになるのに違いない。そこにも、であって、そこにだ…

浜田廣介童話集 (ハルキ文庫) ☆☆☆☆

ほんものの赤い火には あたたかな童話がにあう 星になりたい老いた街灯 子をうしなった母を思う、夢くい獏 酒に酔った男を照らす、やさしい月 ひとつひとつ、繰るのはちいさな物語 ひと夜ひと夜、新しい年へと星を数えて この冬も、霧島、暖炉の火を囲んで

棟梁 技を伝え、人を育てる 小川三夫 ☆☆☆

西岡常一棟梁に学び、鵤工舎で「ひと」と「もの」をつくってきた小川三夫棟梁。組織論、ものづくり論であり、伝統と創出へ手向けた言葉でもある。あらゆる世代と立場の読者を奮い立たせる語り。 時間について 「長い仕事は人を作るよ。/時間の重さに負けな…

都市の感触 [1987] 日野啓三 ☆☆☆☆☆

氷解。 あのころ―村上春樹の嘘くさいにおい、伊東豊雄の軽さと透明感。「地下のしみ」はその全てであった。実に、自分自身の感触として、ようやくわたしは80年代を諒解した。現実。 書きたかったものを読んだという鳥肌。ドッペルゲンガーは実在する。あの影…

あの日からの建築 伊東豊雄 ☆☆

「批判をしないこと」 つまりは行動せよということ。重い言葉だ。 東京を解剖する眼差しを、建築という実体のある言語で表現してきた「野武士」世代。(表現、それは建築家の傲慢だ。)彼らは今、会社社会でいうところの定年を迎えている。 東京をはなれ、批…

本が崩れる 草森紳一 ☆☆☆

偶然手にした随筆で、物書きの正体を知らない。清潔感に欠く文章だ。言葉は立居振舞いの一部。著者の写真を見て納得した。けれども不思議と嫌いにはなれない。本が崩れるだけの日常劇のはずが、李賀の詩を呼び、秋田の旅路にいたる。崩れる本を見事払いのけ…

Tomorrow―建築の冒険 山下保博×アトリエ・天工人 ☆☆

冒険のはじまりは、いつも唐突だ。ガリバーは小人の島に漂着し、アリスが穴をくぐった先では時空間が歪んでいた。突拍子もない物語だが、その根底には常に鋭い社会風刺がある。一見すると大胆で奔放な作風の山下氏もまた、終始、建築へ問いを真っ向から投げ…

美しき日本の残像 アレックス・カー 朝日文庫 ☆☆☆☆

この国を「醜悪」というのは簡単だ。私は、アメリカ人の著者に「一端を担ったのはあなたの国でしょう」と返したくなる。ただ、日本にくらし、古典芸能に造詣の深い著者に対し、私は何ら自信を持ちえない。日本人であることすら、少しの保証にもならない。手…

あらためて教養とは 村上陽一郎 新潮文庫 ☆☆☆

祖父は英文学の学者だった。大学在籍中は戦時下で、英文学科に前後して哲学科も出たはずだから、私と同じ歳のころ、28ではまだ駆け出しの教師だったと思う。 声楽家顔負けの美声を、しっかりとした骨に響かせる。聞きなれたアメリカ英語とは異質のイギリス…

覚えていない 佐野洋子 ☆☆

佐野洋子らしい爽快感がない、全くない。すがすがしさと、不快感は紙一重。

プリンシプルのない日本 白洲次郎 新潮社 ☆☆☆

いっとき白洲次郎・正子が流行った。なるほどな、と思う。日本は今も「戦後」だ。 私がぼやぼやしているうち、何故か政界は「阿部さんお帰りなさい」モードで、野田さんはといえば、相変わらずむくんだ顔してる。政治と金に私は疎い。

ある新書

働き方や女性の生き方を「説く」本はやたら多い。たまに読んでます、ゴシック体だけ拾い読めば賞味10分くらい。今日は3冊流しました。およそ私でも書けることが書いてあるので、時間は浪費しないよう、この感想文も推敲しないつもり。うち一冊は、超大手…

シズコさん 佐野洋子 ☆☆☆☆

重かった。佐野洋子節に救われてはいるけれど。 ひとりの女性が、自分の生をいきる女であり、ある女性の母であり、戦中戦後の日本の女そのものでもあった。やっぱり、重いんだと思う。うまく云えない。

TOKYO建築50の謎 鈴木伸子 中公新書 2010 ☆

東京まちなか散歩気分で。 ゼネ勤務の私には「それほんと?」というくだりも多々あり。でもあらためて、東京とはほんとうに強大なダイナミズムがはたらいている空間だと確認しました。完全にのまれています。 余談ですが、先日ドイツ人アーキテクトは少し恥…

戦前日雇い男性の対抗文化―遊蕩的生活実践をめぐって― 藤野裕子

■戦前日雇い男性の対抗文化―遊蕩的生活実践をめぐって― ■〈実践〉の世界へのアプローチ 藤野裕子氏の本研究は、「男性労働者の遊蕩的で無頼的な生活実践の裏に「男らしさ」の価値体系が通流することを明らかにし、それを通俗道徳の欺瞞性に対する対抗文化と…

貧乏サヴァラン 森茉莉 ☆☆☆☆

鼻につくというか、鼻もちならないというか、それでいて、あるいはそれゆえ、愛さずにはいられない。こんな一文がある。欧羅巴人が鳥や獣の肉を食いちらし、獣の血のような葡萄酒の杯を傾ける、一種執拗な、重い感じは、欧羅巴の絵や彫刻、文学、音楽、すべ…