酒肴酒 吉田健一 ☆☆☆

それでは我々の舌は年をとるに従って荒れて来るのだろうか。それよりもむしろ、我々は先ず三色アイスクリーム、あるいは親子丼に眼を開かれて、次第に複雑な味を覚えていき、そこにも同じ境地を味わうことになるのに違いない。そこにも、であって、そこにだけではないのである。文学の世界に深入りして、子供の時に読んだアンデルセンのお伽噺に興味を失ったのは文学について語る資格がない。
『食べ物あれこれ』より