図書及び図書館史 ☆☆☆

堅苦しいタイトル。それもそのはず、司書課程の教科書だそうです。西洋・中国・日本、古代から現代まで、図書館史を幅広くカバーしています。
とくに中国史は圧巻。中国の古代からの強硬体質、中央集権制に目を見張りました。システムは高度に組織化され、事業はとてつもなくビッグスケール。小国・日本が、こんな国とうまくやっていけるはずがありません。

たとえば、
・紀元前26、成帝による図書整理開始。異本の整理、目録編纂等を行う大事業。13000巻の書物を整理。当時の書物は「簡策」。木簡を連ねたもの。
南北戦争後、15000巻ほどしか蔵書がなかった隋(581-618)。そこで懸賞付きの図書収集事業を展開し、僅か数十年で370,000巻を収集。煬帝は各々につき50部の副本をつくらせ各地に収蔵。
・1407年に完成した「永楽大典」は22,877巻。これはあまりに膨大で印刷できなかったという。
乾隆帝の『四庫全書』は今日でも最大規模の叢書。学者320人による編纂、10年を費やして完成。その量、総計172,860巻。

気が遠くなります。この徹底ぶりは図書事業だけでなく、本の分類法、司書制度にもあらわれていました。ギラギラと野心をあおる中国の仕組みに、改めて感服。
一方ヨーロッパでは衆知の通り、教会や貴族、大学の私蔵がメイン。それゆえ規模は小さく、活版印刷技術の伝播以前では1万冊にも達しません。たとえば、14世紀のソルボンヌ大学の所蔵は僅か1722冊。号令ひとつで本を吸い尽くす中国とは対照的に、各々が本を充実させていく姿勢です。
中国気質やヨーロッパ気質を図書館史からうかがい知りました。