やし酒飲み エイモス・チュツオーラ ☆☆☆☆☆

新カテゴリー「AFRICA」衝撃の登場。ラテンアメリカが洗練されすぎていると感じるほど。書店で偶然手にとり、一気に読み終えました。アフリカの作品、ぜひおすすめを教えてください。

お話:死んだ「やし酒つくり」を探して森から森へ、そして「死者の町」へ。生と死が出会い、神々や異形のものたちがいる。そこには二項対立の単純さも作為もない。そういう者たちや小世界がただあるものとしてあるだ。やし酒飲みは賢く勇気のある妻とともに旅をしていく。理由のない悪意や、悪意のない出来事に遭遇しながら、知恵と機転、偶然や縄張りに救われ、ついには帰郷を果たす。

一緒に長い長い旅をしました。理性や意志以前の、未知の渦巻く時空でした。時折「神々の<父>」だと思いだしたかのように名乗っていたやし酒飲みですが、超越した存在ではなく、原初的なアニミズム、日本の古事記の世界に近いものでした。(解説参照)したがって主人公も、また彼の出会う異形のものたちも非常に「人間的」です。この寓話的作品を影絵に表現できたら。私が劇作家だったら必ずや夢のひとつに加えるでしょう。衝撃的な世界観でした。□140412読了/岩波赤