アウラ・純な魂(他4篇)フエンテス ☆☆

一人称の言葉は時間や場所を行きつ戻りつし、語りかける言葉もまた理に則った現実を保証はしない。(純な魂、アウラ)ゴシック的な閉じた世界、古代が現代に潜む様が、不気味に肌にはりつく。(純な魂、女王人形/チャック・モール)

備忘:生死、美醜、老婆と若いアウラの肉体/時間がつながっていた。表/裏の狭間に存在していたはずの「君」は、ひとつであった表‐裏にのみこまれ消滅するだろう。(アウラ)メキシコからスイスにあてられる手紙。くすぐったく優しい光に包まれた思い出の語りは、兄を死に至らしめ、死者への手向けとなる。(純な魂)時空の冥界から現代に目覚め、残忍さをぎらぎらと振りかざすチャック・モール。すこし安っぽい感じと気味の悪さが絶妙。(チャック・モール)

アフリカ作品を読みたいと意気込みながら、対象がみつからず、ひとまず中南米へとんだ。概してフランス文学の大本流がながれこんいる中南米の現代作家には、至極単純化すれば西欧と土着の相克があり、強烈な個性を各々もちながら、総体としていびつな楼を築いている。日本の現代に文学はあるのか。やはり村上春樹なのか。□140422