知識人99人の死に方 荒俣宏(監修) ☆

夏の終わり、あらゆる虫たちの死が路上に播かれていた。機械のような腹をみせる蝉、硬い羽をもがれた黄金虫。カマキリは踏みつけられ、美しかったはずの蝶の羽はあばら骨を連想させる。その姿は、ひと夏を駆け抜けた魂の抜け殻と呼ぶに相応しい。「死にざま」を通じて「生きざま」が見える。知識人も市井の人であろうと、虫けらであっても同じなのだろう。

                                                                                                                                  • -

ジョゼ・サラマーゴ「あらゆる名前」では、戸籍管理局を死者の名前が埋め尽くす。ひとりひとりのドラマが、かさかさの紙一枚になって、顧みられることもなく積もりゆくのだ。その物語性に共感することはた易い。本書「知識人99人の死に方」は死を真逆の態度で晒す。死は、確かに「見せ場」かもしれないが、やはり「見せ物」にされてしまうと正直、不快極まりないものである。

(関連書籍)ジョゼ・サラマーゴ「あらゆる名前」2011.06.06