ぼくのメジャースプーン 辻村深月 ☆☆☆

同じく読書倶楽部でロングヒット。
心に深く負った傷、そこから始まる様々な問いー心からの反省とは、あるいは復讐とは、本当の救いとは。逡巡の帰着点は自分自身への痛いほどの疑い。それらが正面から描かれている。

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小説らしい小説を久々に読んだ。(こういくものが日本では小説、よ呼ばれるという皮肉もこめて)思い返せば趣向がだいぶ凝り固まっていた。一連のオースター作品、絶妙な人物の畳み掛けで物語を編みこむ南米小説。この両極端だがともに幻想的な小説は、私には強い現実味と共感を呼び起こさせる。それは本当の物語だ。
メジャスプーンはどこまでもテーマに誠実で均衡が取れており、小説然としている。そんな明快な結論や結末への苦手意識がおそらく今の私にはあるのだ。この作品も、結論を読者に押し付けるわけではあるまい。だが結局は落ちどころをみつけなければ、日本的な所謂小説としては体を成さないのだから致し方ない。