ワシントンハウス 秋尾沙戸子 ☆☆☆

いわゆるヒストリーと、オーラルヒストリー。両方が欠かせないことを改めて思う。それは文字通りの日本史でも、文化史でも建築史でも同じ。鳥の視点と人の視点を行き来することは簡単ではないが、この本はわりとうまくやっている。それもパブリック向けに。

次いで青臭くも考える。大義としてのデモクラシーの根の深さを、私たちはどこまで認識できるのだろう。本を読んだ一日本人の私と、戦時中、鹿児島は知覧にいた祖母と(今、私たちはその米寿を祝っているところだ、たくさんのご馳走と贈り物で)、例えばドイツや韓国の友人と、あるいはイラクにいるかつての友人と。

視点は、とりとめもなく多様だ。だからこそ、ヒストリーには人の視点が要るのだ。結局、歴史を認識するのは個々人だから。