新実南吉童話集(岩波) ☆☆☆☆

アイは紙一重。愛と哀のことである。夭逝した作者の弱さと強さ、その両方がうつくしい語りに結晶化されている。

ただ、うつくしいだけではない。どの小作品にもひやりとするものがある。純粋では割り切れない子供の一面や、ややもすると時代においていかれる大人。なにより、この童話の世界に、都市化と近代化の一途をたどる時代性が挿入されるにつけ、はっとさせられたのだった。