アヘン王国潜入記 高野秀行 ☆☆☆☆☆

ビルマにあってビルマでないワ州。そこはアヘン生産の「黄金の三角地帯」。素朴な村人たちと自らケシ栽培に勤しみ、村の酒宴に、そして生や死に立ち会う。その筆者が町でもらしたのひとこと、「世界」はまだ存在していたんだな、というのが率直で印象に残る。

「善悪の此岸」と「善悪の彼岸」。政治・貨幣のパワーバランス、民主主義という世界の大義名分、ミャンマー政府と反政府のワ軍。筆者の体験したワの生活が、一見関係のない私たち読者の生活を逆照射し、不確かにします。その感覚をここに言葉にしようとすると、ほんとうに、もっとわけがわからない。とりあえず、読んでみてください。本書の純粋な面白さと、ちょっとした混乱を、体感してほしいと思うのです。