やればできる学校革命 武藤義男・井田勝興・長澤悟

福島県三春町。1980年代から十数年にわたる、町の教育・学校づくり。教育者と設計者による記録、文中に挿入された生徒や保護者の手紙など、「学校」という社会を複眼的にとらえるヒントとなる。


「子どもとしての生き方に怠惰」になっている、という武藤氏の指摘に始まる、先生たち、設計者、そして地域の学校づくりの記録。学校とは「自らの力で自由と責任を学ぶところ」。本来的な教育を導くには、先生から変わらなければならない。実に熱い手記である。
戦後に移入された民主主義を、果たして教育が日本に根付かせたかを私は知らず、声高に掲げられがちな「自分らしさ」に欺瞞と偽善を感じる。だがそれは私の卑しい思込みだろうか?自分らしさというテーゼに真摯に取組む教育者の言葉が、そんな思いをもたらす。
ただ肝心なのは、この大真面目な大人たちの理想を、押付けがましくあらわさないことではないか。基礎石のように、ひそやかにしかし泰然として構えたい。子どもたちに、出来合いのタイルを張り付けることは教育ではあるまい。