ミシュラン三つ星と世界戦略 国末憲人 ☆☆

ここに、3つの職。あなたはどれを選びますか?サービス時間、料金、主な商売道具、そしてお客様との関係は次の通り。

A 15分〜1時間半/2000円〜15000円/鋏/鏡の中にお客様の表情の変化を見ながら。
B 数時間〜1日(仕込を含む)/ほぼ上限なし/包丁/お皿の中にお客様の満足度を確かめながら。
C 上限なし/お客様の懐事情次第、下限・上限なし/鉛筆/空間の使われ方にお客様の使いこなしを期待しながら。

「世界戦略」と称すには物足りない書籍だが、料理人・評価者(ミシュラン調査員)・客の関係は興味深い。(修論で書いた、建築家・編集者・女性読者の関係に似ているだろうか)食であれ建築であれ、客の主体性を問いたい。レストランの客も、建築でいう施主も、受け身の立場に甘んじず、参加者としての自意識と責任が必要ではないだろうか。そうしてはじめて、サービス業にとどまらない、文化が形成されると思う。

「食のグローバル化」の中、ミシュランの示す指標が、権威であり続けるかはわからない。けれども、ミシュランの存在自体が、食文化の変化を示し続けるのだろう。

(さて、先のABCの職、お察しの通り、A=美容師、B=料理人、C=設計者です。Cを択んだ私は、Bに猛烈に憧れてしまいます。タメイキ)