白洲正子自伝  ☆☆☆

潔く、それでいて温かい。たしかにそれは薩摩隼人の血かもしれないし、これぞ白洲正子なのかもしれない。

―私は幸福だった。というより、この雑木林の前に、明るく開けた野原が見えるが、そこへ行けば幸福が待ちうけているような感じがしたのである。―

西国の朝は遅い。幼い日々、かおる畳の上にはねかえり、葉裏を照らす、あの夏の陽を思い出した。