2014-01-01から1年間の記事一覧

○に近い△を生きる 鎌田實 ポプラ新書 2013 ☆☆

十年後は見えない。建築の未来も、目の前の施主に差し出すかたちも見えない。○を目指すはずが焦りに終わる。 ・△を生きることは新しい知恵ではない。土と火から器をつくり、季節を食に再現する田舎暮らしも△のバランスにあるし、戦後、模索と失敗を重ねた祖…

14/04/02 静岡美術館めぐり 

・天竜浜名湖鉄道 ・秋野不矩美術館 藤森照信 ・芹沢介美術館(石水館)白井晟一 ・登呂公園・駿府公園ぽっかりあいた平日の一日、急遽ふだん通り過ぎてしまう静岡へ。ふたつの美術館を訪れました。鑑賞者や素材へのアプローチが対照的な作品。丘の淵にたつ…

秋野不矩美術館

春麗らかな四月のある日。桜とのぼり旗が交互に並ぶ川べりを、物見櫓が見渡しています。物見櫓というにはいささか大きく、アイゼナッハの要塞のようですが、幽閉されたルターを思わせる不気味さは全くありません。松の木に囲まれ、すこし傾げた表情がおおら…

石水館

どんよりとした空はついに雨空となりました。登呂公園の南端、住宅地と隣接した角地に、石水館はあります。垂れ込める雲よりもさらに身を沈め、とらえどころのない姿。すこし驚いて入口へと向かいました。 ・アプローチをくぐると、陰鬱に聞こえたはずの雨音…

天竜浜名湖鉄道・登呂公園・駿府公園

天竜浜名湖鉄道(掛川〜天竜二俣):春を感じる一時間のんびり列車。線路の両側に桜、田んぼや茶畑、昔懐かしの駅舎が次々にあらわれ、天竜二俣駅にはSLの保存展示もあります。おすすめ。私、実はテッチャンです。ランチ:どっさり刺身定食1200円。どれ…

供述によるとぺレイラは… A.タブッキ ☆☆☆☆☆

ぺレイラはわたしかもしれない。母、あるいは妹かもしれない。リスボンの一市民、ある男。肥満したからだの内奥で、レモネードでごまかしてきた、「生のない生」。ゆすぶられ、ほころんだ糸は、ついにその先の精神の塊を、閉じた軌道から放つ。個人の精神、…

14/03/30 石山さん退官記念シンポジウム 「これからのこと」大隈講堂

建築という物語、そして一人ひとりの「これから」石山修武がよくわかる会だった。建築の講演ではない。テーマは「これまでのこと」ではなく「これからのこと」、かたちのない未来なのだから。(鈴木さんの逝去が心から惜しい。磯崎さんが体調を崩して欠席さ…

密林の語り部 バルガス=リョサ ☆☆☆☆

はじめに言葉があった。世界という名の物語がそこから生まれた。アマゾンの密林、ユダヤの星のもと、こおろこおろとかき鳴らした海にも。「緑の家」の幻惑とは違う、畳み掛ける言葉と、重なり合った時の流れだった。リョサは私を励まし、くじけさせる。夢を…

サービスを超える瞬間 高野登 ☆

設計も家事も、もてる最高の感性と心からの喜びで行いたい。でも与える偽善に陥らないよう、与えられることへの気付きを忘れず、ありがとうといいたい。「心づかい」が「サービス」というビジネス用語となってひさしい。24時間ぎらつくコンビニ、歩いてい…

小川洋子

カラーひよことコーヒー豆 2009 ☆☆☆ 失われていたものを手に取る感触。懐かしさではなく優しさ。そよ風のような親しみで、私はすっかり好きになった。夜明けの縁をさ迷う人々 2007 ☆☆☆ 偶然の祝福 2000 ☆☆☆☆ 日常の隙間にある物語。歪みも優しさも何もかも、…

小さい伝記 植田正治 ☆☆☆

「この人は本当に写真が好きなんだな」「やさしい人なんだな」。写真をぱらぱらと繰って父が言った。ポートレートを中心に相当数の作品が収録され、植田正治の飾りのない言葉がつづられた作品集である。作品として、写真の構図や人物の表情(笑顔、はにかみ…

雪男は向こうからやってきた 角幡唯介 ☆☆☆☆

新年初の一冊がまさか「雪男」とは自分自身おどろいている。ただ、キワモノのバラエティ番組(年末年始に多い)とは全くちがう。角幡さんらしい、客観的で少し理屈ぽい視点が余すところなく発揮されたドキュメンタリーである。雪男伝説は、現代の高度なメデ…

御社の営業がダメな理由 藤本篤志 ☆

実家で拾った。新入社員のころ妹が読んだものだろう。営業論を設計論にそのまま翻訳することは難しいが、一般的な組織論にはなりそうだ。いわく、営業結果=営業量×営業能力 営業量=営業時間―(意識的怠慢時間+結果的怠慢時間) 営業能力=営業知識量+営…

ぬるーい地獄の歩き方 松尾スズキ ☆☆

ぬるくても、熱くても、地獄をかたる人々はどこか自虐ヒーローめいて、悲壮感を感じられない。客観的に自分の状況をみているからだろう。品の悪いところが多々ありますが、面白く読んだ。